『美を超越せよ』

結構書きかけのまま下書きで放置している記事というのがあって、
基本的には自分の中の熱が冷めてしまったのでもういいかな…と思っているのだけど
表題の記事タイトルは我ながらシビれるものがあったので、ここにサルベージする。

私は自分が可愛らしく生まれつかなかったことにかなり意識的に生きてきたため、
子供時代の性格的な歪みによる人間関係のままならさすら、8割程度は外見に原因があると思っていた。
自分がブスだと気付いていないブスを揶揄する話みたいなのをたまに見るが、自覚しないで生きてこられる程度の微笑ましいブスなど(って言葉を使用するだけで心苦しいが)暖かく見守ってやれよ、と思う。
そんな卑屈さをバネに涙ぐましい努力をして自分を磨き上げていった女性もいるであろう中、私は世の男女が真剣片手に渡り合っている土俵に上がる資格のない、戦力外通告を受けた者としての根性がすっかり身についていた。

それはそれとして、自分自身の装いに対するしっくり来なさは解消したくて、パーソナルデザインなどをかじってだいぶ己の個性を肯定的に捉えることはできるようになった。
今自分の外見を、自分なりの客観性を持って称するなら「個性的」となる。
ファッションが個性的なのではなく、本人の造形が個性的なところが重要。(恐らく美人系じゃないアバンギャルドの人には多いのではないかと思うが)
個性的の世界には、良いも悪いもないから、なんのしがらみもない。だからためらいなく自称できる。
(自意識過剰みたいな感じがするが、アクが強過ぎて常識的で一般的な装いが軒並み似合わない苦労と隣り合わせなので許していただきたい。あと、非凡な顔立ちかというと、そういうことでもない)
そして、強烈な個性はやはり強烈な個性の装いを持って中和され、時に表情を魅力あるものとして見せてくれたりもする、ということも素直に感じられるようになった。
みんな違ってみんないい、っていうようなことね。

ところがどっこい、それでもなおコンプレックスを克服できない私は外見を褒められると、情けをかけられていると思って勝手にプライドを傷つけられ、つい腹を立ててしまう。
もちろん表面上は、大人なのでにこやかに返していまますが。

例えばごくごく稀に、「お洒落」「綺麗」「美人」というようなコメントを賜ることがある。
以下、お世辞と想定した場合の私の見解。

「お洒落」はまあ、実際のセンスがいかほどのものかはさておき、こちらが無難とは言い難い格好ばかりしている関係上、そういう褒め方に至る原理はわかる。
正直、ほぼ自分の毒気を中和するためにそういう服を着ているので、服に着目されると気恥ずかしいというか居心地が悪いのだけど、お気遣いは有難く頂戴する。

「綺麗」は、客観的に見て平常時の私に対する適切な形容とは言い難い。
まあ、百歩譲って感じ方は人それぞれなので、その人がそうだと思ったとしたら否定する筋合いはない表現だ。心苦しさを感じつつもお心遣いのみ有難く頂戴する…けど、ちょっとモヤモヤする。

「美人」これは、ダメである。
個性的な格好の似合う篠原ともえのような美人もいるが、基本的に美人とはレベルの上下のある概念であり、横の広がりはない。(だから「◯◯美人」みたいなオプションをつけないといけない)
そして、美人ヒエラルキーの頂点に君臨するのは、平均顔である。
色んな個性的な顔を足して割って中和し、これといった目につくアクを取ったのが美人である。
アクの強過ぎる私の顔に対する形容としては決定的に不適切であると同時に、ウソがあからさま過ぎるのである。
(私の性格が捻じ曲がっているのは承知だが)なんだがバカにされているとしか思えなくて、むしろはらわたが煮えくりかえりだす。
女は美人って言っときゃいいのか、と。

美人という言葉を褒め言葉としてよく使うのは男性の方で、とりわけ女を人間だと思っていない奴ほどその尺度で人を見る、と勝手に思っている。
びっくりするくらい、自分の顔も顧みず女の顔を値踏みするよね。
遺伝子レベルで美人を追い求めるようにインプットされているのだから仕方がないけど、勝手に女をランク付けして、本音ではこの辺なんだけど、お世辞ではもうちょっと上だよ、なんていう気遣いは、興味ない男から言われても心底どうでも良いし、そのいらん気遣いを生じさせている前提がそもそも失礼だろう、と大人気なく思っている。
ここはお前の世界じゃねーんだよ(バナナムーンゴールド)

美人か美人じゃないかでいうと美人じゃないけど、自分をよく知っていて魅力的な外見の人はたくさんいる。
そういう人を褒める言葉、もっといっぱいあるんじゃないの。
その人の個性をきちんと見て捉えた言葉が、一番その人に贈るのにふさわしい言葉なんじゃないの。
(そうなってくるともうお世辞じゃないけど)
って思うんですけど、求めすぎですかね。
せっかく十人十色の世界で機嫌良くやってるんだからさ。

一番許せないのは、男同士の会話で「美人がいる」って紹介したのち、「言うほどじゃねーじゃん」ってなるパターンの、紹介した側の奴。
お前が美人とかいらん概念を持ってきたおかげでその人は知らないうちに持ち上げて落とされたよ、っていうの、他人の話であっても無性に怒りを覚える。

逆に女子は上下関係に敏感なのか、明らかに美人系であろうローラに「可愛い!」って言ったりするよね。
「美人」は好意がなくても言えるけど(逆に言うと男性はいらぬ誤解を避けるために恋愛対象にしていない女性を褒める時に「美人」という言葉を使うのだと思う)「可愛い」には好意がある。
すごく美人だけど、それに限らず今のあなたの存在全体がチャーミングだよ!っていう意味、だと思っている。